優れたクリエイティブが
10倍の売上をもたらすとは限らないが、
優れたクリエイティブなしに
売上を10倍に伸ばすことは難しい。

株式会社エム・イー・シー
取締役
業務統括本部 本部長
山崎 保則

営業ツールの手作りからスタート

当社は1999年4月に創業しました。約10年間は下請けSIビジネスを中心に事業を回してきましたが、当初から「脱・下請けSIビジネス」が経営目標でした。その一環としてパッケージ開発にも取り組み、2009年6月には初のヒット作である「りぽかんセットアップ管理」(以下、「りぽかん」)をリリースしました。このパッケージは、Oracle EBSへの自動入力を支援するツールであり、もともとは社内のエンジニアの負荷軽減のために開発したのでずが、さまざまな開発現場でニーズが期待できると考えて市販化したのです。
その販売をプロモートするために、新たにソリューション事業部を設立し、わたしはその責任者として製品販売に力を入れていくことになりました。具体的な施策としては、WordPressでWebサイトを立ち上げて製品紹介のページを作ったり、ExcelやPowerPointでリーフレットや導入事例を手作りしたりして、営業活動に役立てていきました。
もっとも、こうした作業は製品の売上になかなか結びつかず、社内からは厳しい目を向けられる状況が続きました。

営業ツールの制作を社外の制作会社に委託

一方で、SI事業は好調であり、2014年11月には業務拡大のために本社移転が決まり、自社ビル内にデータセンターに設置することになりました。それをきっかけに、ロゴや名刺、コーポレートサイト、会社案内などを一新することになり、さすがにこれだけのものを自作するのは難しいことから、外部にクリエイティブを依頼することにしました。
同時に、なかなか効果の出なかった「りぽかん※」の営業ツールについても、同時に見直すことにしました。
手始めに「りぽかん」のランディングページの制作してもらったところ、出来上がってきたアウトプットは自作とは別次元の品質であり、さすがにプロのクリエイティブは違うと納得しました。
とはいえ、売上拡大に直接結びついたわけではなく、手応えは感じたものの、単にクリエティブの品質を高めたからといって、成果が簡単に上がるものではないということも理解しました。

そうしたなかで、リーフレットや導入事例も作っていったことから、相乗効果も徐々に出てきて、受注も増えていきました。期待以上だったのは、あるお客様に、「りぽかん」のリーフレットや導入事例を会社案内に挟んで営業活動を行った際に、SIビジネスもやっているのなら「りぽかん」の導入にあわせて開発業務も手伝ってもらえないかというお話をいただいたことです。従来のような2次請け、3次請けではなく、プライムで開発案件を受注することができ、「脱・下請けSIビジネス」につながっていったのです。 このとき実感したのが、会社案内、リーフレット、導入事例などは、単に製品の営業ツールとして役立つだけではなく、そうしたコンテンツ持っていることが、製品や企業の信頼感にもつながるということです。


※2009年にリリースした自社開発製品

クリエイティブソリューション部の立ち上げ

その後、 自社開発製品のラインナップも増え、また、自社データセンターを利用したクラウドサービスの提供も可能になったことから、自社の製品やサービスについてトータルにクリエイティブ戦略を立て、施策に移していくキーパーソンが社内に必要ではないかと考えるようになりました。
そして転機が訪れました。
社内にクリエイティブ部門を持つことを検討している最中に、いままでクリエイティブを依頼していた制作会社のディレクターが独立したという話が伝わってきたのです。彼は、こちらが発注した制作物を黙々とつくるのではなく、「その制作物の必要かどうかを含め、クリエイティブ戦略の観点から考えてみませんか」という提案を行うなど、切り口が独自で、制作態度にも共感できたことから入社を誘ってみました。
紆余曲折はありましたが、クリエイティブ・プロデューサーとしての入社が決まり、2016年秋には、社内にクリエイティブソリューション部を立ち上げることになりました。

クリエイティブの外販のビジネス化を目指す

問題は、IT企業があえてクリエイティブ部門を持つことに対する、社内からの違和感や反対意見です。当然ながら大きな反発が予想されたため、コストセンターではなくベネフィットセンターであることを訴えるという戦略を立てました。
具体的には、「クリエイティブの外販」です。
一般に、技術力のあるIT企業は「製品開発は得意だが、売るのは苦手」という傾向にあります。苦労して製品やサービスを作っても、世の中になかなか受け入れてもらえないのはなぜでしょう。開発に力を注いでも、それを世に知らしめる努力を怠っているためかもしれません。
あるいは、自社の製品やサービスを分かりやすくお客様にお伝えしたくても、そうしたクリエイティブを提供できる制作会社が少ないせいかもしれません。
実際、技術的なポイントを十分に理解し、的確に表現するのは容易ではありません。以前の当社と同じように、困っているIT企業は少なくないはずです。そこで、自社の製品やサービスのクリエイティブを内製するだけでなく、蓄積してきたクリエイティブのパワーを外販することで、優れた製品やサービスがキチンと売れる世の中にしていきたいと考えています。

クラウド電子投票サービス「i-vote」の売上に貢献

クリエイティブソリューション部の取り組みが、社内で注目されるきっかけとなったのが「i-vote」のプロモーション活動です。
「i-vote」は2015年1月にリリースしたクラウド電子投票サービスであり、自社データセンターを持ったことで提供が可能になった、当社初のサービスビジネスです。選挙をクラウド化するという発想のサービスは他にほとんどなく、サービスメニューも充実していますし、なによりも選挙に掛かる費用・負担を大きく削減できるという点で、このサービスは売れないはずがないと信じていました。
ところが期待したほどには売れない状況が1年以上続いていました。
最大の課題は認知度の低さです。
そもそも「i-vote」と競合するサービスがほとんどないということは、そうしたサービスの存在そのものが世間に知られていない可能性があります。検索エンジンで調べようとするお客様もいないのではないかということです。仮にタイムマシンが売られていたとしても、その存在が知られていなければ「どこで買えるのだろう?」と検索する人もないはずです。それと同じだと考えました。

そこで、「りぽかん」の経験を踏まえて、Webページ、リーフレット、導入事例の3種類の営業ツールをつくったうえで、認知度を高めるために潜在ユーザー層にDMを送ることにしました。役員選挙などで「i-vote」を必要とする社団法人の事務局などは、意外と事務作業のデジタル化進んでいないようなので、アナログなマーケティング手法が効くのではないかという判断です。クリエイティブ・プロデューサーも、過去のダイレクトマーケティングの経験から「このサービスは火が付けば絶対に売れます。いまは濡れている紙にマッチで火をつけようとしている状態ですが、いったん火が付けば、あとはメラメラと燃えるはずです。事務局向けのDMは必ず火種となりますから、諦めずに進めましょう」という言葉を信じて我慢を続けました。
結果的に、2018年ごろから問い合わせが増え始め、その後は急速に売上が拡大し、2018年の売上をベースにすると、2019年の実績は10倍、2020年見込みは20倍という数字が出ています。

当たり前のことを当たり前にやる大切さ

「i-vote」の売上が急増した理由は、いわゆるクチコミ効果だと考えています。「i-vote」のお客様は、学会などの社団法人事務局が中心ですが、研究者の皆さんは複数の学会に所属していることが多く、ある学会で「i-vote」を導入していただくと、その良さが他の学会にもクチコミで伝わって採用に至るというケースです。最近では、Webからの問い合わせが、月に数件は来るようになり、その多くが成約に結びついていますが、それもクチコミで「i-vote」の認知度が高まったという背景があると考えています。「ユニークなサービスがあるようだから、Webで調べてみよう」という流れが生まれつつあるのでしょう。
では、「i-vote」の売上を増やすために何をやったのか?」と聞かれれば、「何も特別なことはしていない」という回答になると思っています。
Webページとリーフレット、導入事例という、基本的な営業ツールを用意したうえで、認知度を高めるためにDMを送付しただけです。
最初にWebページを作って問い合わせの受け皿を用意しました。その運用を続けたことで、検索エンジンの評価が高まって検索時にヒットしやすくなったということもあるでしょうし、サービスに対する信頼性も高まったのでしょう。また、リーフレットや導入事例を用意しておいたことで、問い合わせをくださったお客様への訪問時に、「i-vote」がどんなサービスで、どんな効果が期待できるのか、分かりやすく説得力のある説明ができたことが大きいと思っています。当たり前のことを当たり前にやることが大切だということです。

クリエイティブは開発コストと考えるべき

「i-vote」のプロモーションを振り返って、大切なのは、費用対効果を長い目で見ることだと思っています。単年度で見てしまうと、どうしても「コストに見合っていない」ということになりがちですが、長い目で見れば「やってよかった」ということになるのです。 その意味では、クリエイティブ関連の費用は、広告宣伝費とみなすのではなく、製品やサービスの開発コストの一部であり、最初から必要なものだととらえるべきです。
注意したいのは、サービスや製品の品質が優れていたとしても、クリエイティブを行えば売上が必ず増えるわけではないということです。「i-vote」では売上が10倍になるという素晴らしい効果が得られましたが、他の製品やサービスも同じようにいくとはかぎらないでしょう。
しかし、リーフレットや導入事例は問い合わせを増やすきっかけになりますし、Webサイトは問い合わせを成約につなげるための受け皿にもなります。そのためには優れたクリエイティブであることが必要です。それも単にWebページのデザインが優れていたり、導入事例の文章に説得力があったりすればいいということではありません。製品・サービスの売上拡大にはどのようなマーケティング戦略が有効で、どのような施策を打っていくべきかということを含めて的確なアドバイスを行え、実際に高品質なアウトプットを制作できるクリエイティブ能力が必須でしょう。

MECのクリエイティブソリューション部は、そうしたお客様のニーズに柔軟に対応し、成果を出せるクリエイティブを今後も提案していきたいと考えています。クリエィティブに関してお悩みをお持ちのようでしたら、ぜひご相談ください。

強みは、
  • 理解力
  • 対応力
  • 表現力

MECのクリエイティブソリューション